前日までの暖かい陽気が一変、冷たい雨のふる音楽堂。部長は細川理衣さんが描いてくださった素敵なガラスペン画を眺めています。と...そこに現れたのは?
ガル:
はぁぁ、早く春が来てほしいガル…「春待つ北ヨーロッパからの息吹」って、北欧で暮らしてるひとはずっとこんな気持ちガルね…
笠間芙美(以下、笠間):
その絵、私の中学校の同級生が描いたんだよ、ガルちゃん。
ガル:
びびびびっくりしたいろんな意味で…か、笠間さんこんにチュア!
笠間:
びっくりでしょう!中学校の吹奏楽部で、私はホルン、細川さんはフルートだったの。当時からとっても絵が上手だったよ。
ガル:
(さ、早速インタビューしなきゃ…!)
部長も驚きの事実発覚。なんだか驚きの多いインタビューになりそうですよ...?
ガル:
笠間さんはフィンランドに留学して、その後も演奏活動をしてたガルよね。昔から北欧に行きたいって思ってたガルか?
笠間:
ううん、フィンランド行きを決めたのは大学4年生の冬、11月ごろだったんだよ。
サントリーホールでフィンランド放送交響楽団の公演を聴いて、その「北欧の音」に心を奪われてしまったの。同時に私の頭の中に浮かんだのは「フィンランドに住む!」ということ。「住みたい」とか「住めたらいいな」ではなく、決定事項としてね。終演後すぐに金沢の家族に電話をして、ものの5分でフィンランド行きを決めたの。そして5月10日には引っ越し!
ガル:
えええっ?!なんてスピード留学、スピード移住!
…でもね、ガル、「北欧の音」ってまだよくわからないガルよ…どんな音ガルか…?
笠間:
最初に感じたのはとにかく「寒い」!空気が澄んで、きらきらした風が吹き抜けていくような。その風が、白樺のあいだを縫って、さらに湖の上を吹き抜けていく。そんな映像がパッと目の前に浮かんだんだよ。あの経験は忘れられないなあ。
ガル:
ふむ…それって、オケの演奏にどんな特徴があるってことガル?(しつこく突っ込む)
笠間:
私は弦楽器のことには詳しくないのだけど、とにかく弓の動きが速い、というのはあるかな。スピード感がある、というのはホルンでも同じで、音に勢いがある。これはフィンランド独特の音のように思う。
ガル:
北欧、じゃなくてフィンランド?
笠間:
ノルウェー、デンマーク、スウェーデンの音は、もう少し重厚感があるの。この3つの国とフィンランドは、言語の系統も全く違うんだよ。
ガル:
つい北欧ってひとくくりにしちゃうけど、全然違うガルね…
ガル:
北欧って、芸術家をすごく大事にしてくれる文化があるって聞いたガルよ、ほんと?
笠間:
私が在籍していたシベリウス・アカデミーは、留学生の私も含めて学費は無料。それに、フィンランド放送響とヘルシンキフィルハーモニーのチケットがタダなの!しかも学校の至近距離にコンサートホールがあって、ギリギリまで練習して、そのままホールに直行できるんだよ。公演はほとんど行ったなあ。
ガル:
わぁぁうらやまガル…ところで笠間さんは10年半の海外生活のうち、ドイツにも行ってるガルね。
笠間:
ドイツも芸術分野の学生に手厚いサポートがあったよ。やっぱり学校からホールが近くてね。フィンランドに比べてドイツは海外オーケストラの公演も多くて、世界に名だたるオーケストラの演奏を聴く機会がたくさんあったんだけれど…
ガル:
けれど?
笠間:
ますます「フィンランドの音が好きだ」って気づいたんだよね。自分の求めるものが明確になった。
ガル:
うーーーんガルはますます「北欧の音」「フィンランドの音」を体感したくなったガル…!
部下:
帰国されたのも、フィンランドにいて日本人であることを強く意識するようになったからだとブログで拝見しました。では逆に、日本に帰って来たいま、あらためてフィンランドの良いところは何だと思いますか?
笠間:
とにかく、人と人との関係がとてもフラットで、生きやすい社会だったな。年齢、性別、国籍による違いで相手への態度を変えたりしない。みんなが自分自身のことをちゃんと大切にしていて、良くも悪くもマイペースで生きているからなのだと思う。他人に変に干渉したりせず、優しく接することができる。これは、日本人が学ぶべきところだなあ。
ガル:
フィンランドのこと、北欧のこと、もっともっと知りたいガル…でもそろそろ笠間さんの公演の紹介もしなきゃ…
笠間:
H14「白夜の北欧紀行」ではフィンランドの作曲家サッリネンのホルン協奏曲を演奏します!音楽祭では抜粋だけれど、私が師事するエサ・タパニ先生が全曲録音しているの。ぜひ聞いてみてほしいなあ。
あと、去年から参加している「ガルガンアンサンブル」。これから発表になる無料公演でたくさん演奏するので、こちらもぜひ!
ガル:
ガルのなまえーーー!
笠間:
そう!ずっと続けていきたいと思っている大事なアンサンブルだよ。フルート、クラリネット、バスクラリネットの木管に、金管は私のホルン。そしてパーカッションが入ることでさらに音楽が引き締まるんだよね。なかなかない編成でしょう。
クラリネットの松永さんが編曲を全て担当してくださっているのだけど、とにかくそのアレンジが素晴らしくて。吹いていて気持ちいいんだ。
ガル:
音楽祭の魅力は、ふらっと立ち寄った無料公演がスンバラシイことガルよね!
笠間:
あっ。ガルちゃん、さっきからずっと話題にしている私の先生の写真、見る?(写真を差し出す)
ガル:
やあ!こんにちは!って先生かわいすぎガル…こ、これがフィンランドの風…ガルも吹かれたい!
最後の最後まで驚きの連続なインタビュー。
アジアにも様々な国があるように、北欧にもその国ごとに様々な文化があるようです。先日のランチタイムコンサートでも、日本シベリウス協会会長の新田ユリさんが、北欧の様々な国の違いをお話しされていましたね。音楽祭でも、作曲家の国をあらかじめ調べてみて公演を聴くと、違った聞き方ができるかもしれません。皆様どうぞ、おためしあれ。
北欧の音楽たち、やあ!こんにちは!
文中に登場するガルガンアンサンブルを含む無料公演のプログラムは、4月ごろ発表となります。乞うご期待!