ガル「ガルさぁ、指揮者になりたいけど、やっぱり楽器もできなきゃダメガルよね…」
部下「何言ってんですか部長、部長は楽器そのものじゃないですか!ホラ(お腹の穴を指差して)」
ガル「そうだった!ガル、管楽器だったガルよー!ほっ。ララランララーン♪ 」
部下「さあ部長急いでっ、管楽器の大先輩に会いに行きますよっ 」
そんな会話をしながらガル部長と部下が向かった先には…サクソフォン奏者の筒井裕朗さん。筒井さんはこの音楽祭で、グラズノフ作曲の「サクソフォン協奏曲」のソリストとしてコンサートホールのステージに立たれるのです。 リハーサル途中の筒井さん、楽器を持っていらしてくださいました。
ガル:
サックスってたたずまいがもうかっこいいガル…ブラスバンドでも、トランペットと一位二位を争う人気楽器ガルよね!
筒井:
そうかなぁ?僕がサックスを始めたきっかけは、ブラスバンド部のサックスパートが足りなかったから、なんだけどね(笑)、最初はパーカッションで遊んでたんだ。
ガル・部下:
ええっ?!じゃあ、もしかしてドラマーになってたかも…
筒井:
でも一旦始めてみたら、高校時代はもうサックス一筋。初心者は僕一人だったけど、負けてたまるもんか!って必死に練習したよ。
筒井:
ところでガルちゃんにとってサックスってどんなイメージ?
ガル:
パァァァーーンって華やかな音!
筒井:
そうだね。ガルちゃんは「倍音」ってわかる?
部下:
(横からサッ)部長、例えばピアノで「ド」を弾いたら、「ド」だけで部長の耳に届いているんじゃないんです。1オクターブうえの「ド」、「ソ」…いろんな音が含まれているんですよ。
(ガル、ポカーン)…ええっと、カレーのりんごや蜂蜜みたいなものです!
ガル:
食べ物ならわかった!隠し味ってことガルね!
筒井:
(笑)サックスの持ち味の一つは、音に含まれる「倍音」の数が多い、ということなのね。この、たった一台のサックスが奏でた音に豊かな広がりが出る。たとえ2人がユニゾン(同じ旋律を演奏すること)で吹いたとしても、もっと多くの人が吹いてるような豊かで鮮やかな音色を生み出すことができるんだ。ガルちゃんが「華やかだ」と思ったのは、サックスの倍音のおかげだね。
筒井:
ところで、このグラズノフはもう聴いてみた?ジャズやポップスで使われるサックスの音色とは随分イメージが違うでしょ?
ガル:
聴いたガル!とにかくおっしゃれーーー!ガルの思ってたサックスの音色とちょっと違ってた…華やかだけど落ち着いていて上品で…びっくりしちゃったガルよ。
筒井:
サックスが生まれた頃の音は、今のクラリネットくらいの音量だったそうなんだ。
部下:
アドルフ・サックスがサクソフォンを発明したのは1850年頃ですね?
筒井:
そう。その頃は楽器の一大発明ブームが巻き起こった時代で、音楽家や作曲家たちが次々と新しい楽器を生み出しては淘汰されていった。悲しいことに、サックスも発明された後、クラシック界では一旦「忘れられた存在」になってしまったんだ。その後、海を渡ってアメリカに行き、ダンスミュージックなどで音量的にトランペットやドラムに対峙できる楽器として脚光を浴び、一段と魅力ある楽器としてクラシック界に戻ってきたんだ。
その頃発明されたたくさんの楽器の中で、今これだけの地位を獲得している楽器はサックスくらい。それだけ優れた特性を持っていたということなんだろうね。
筒井:
現代音楽では、高い音を多用したり特殊技法を取り入れたり、吹いていても聴いていても「うわーっ楽しい!」という存在のサックスなのだけど…僕としては、ちょっと「真面目さ」が恋しくなるんだ(笑)
ガル・部下:
えっ?真面目さ?!
筒井:
ただただ「楽しい!かっこいい!!」で終わるんじゃなくて、こう…モーツァルトやベートーヴェンのソナタにも対抗できる存在感がほしくなるんだ(笑)。
ガル:
じゃあグラズノフのこの曲はぴったりですね!グラズノフは、洗練された作曲技法をもって、ロシアの音楽を発展させた作曲家だと聞きました。
筒井:
そう!そのグラズノフの名曲をオーケストラと共演できる日が来るなんて、本当に幸せなことです。
ガル:
筒井さん、そんなグラズノフさんのサクソフォン協奏曲、聞きどころを教えてほしいガル♪
筒井:
オケとの駆け引き、かな。聴く側にはあまりわからないかもしれないけれど、実はこの曲、とても細かく変化するテンポの指示があるんだ。時にオケがリードしたり、時に僕がテンポを生み出したり。「今、どちらがリードをとっているのか?」って感じながら聴いてみてほしい。
ガル:
オケと一緒にハーモニーを生み出すタイプの協奏曲ガルね!(ご参考:ガル部長のお勉強4)ちなみに、筒井さんが演奏していて「気持ちいい!」って思う場所、どこガル?
筒井:
この曲は単一楽章なのだけど、本当なら二楽章にあたるゆっくりな部分の真ん中のここ!(楽譜を指差しながら)
学生時代、レッスンでこの曲を吹いているとき、フランス人の先生がここに来ると決まって「…パヴァロッティィィ!!!」(筒井さん、両手を大きく広げる)って叫ぶんだよ(笑)
ガル:
パヴァロッティさんみたいに歌いなさいってことガルね!
筒井:
そう。カンタービレの指示があるでしょう?吹きながら感極まってしまう、素晴らしいメロディだよ。
ガル:
ガル、心の中で「パヴァロッティ!」って叫んじゃいそうガル…筒井さん、聴衆のみなさんに一言お願いしますガル!
筒井:
サクソフォン協奏曲を代表する三大コンチェルトの一つ、グラズノフの名品をオケとの共演でお聴きいただける大変貴重な機会です。ぜひ、たくさんの方にお聴きいただきたい。コンサートホールの舞台でお待ちしております!
三大...ということで、「あと二つは何ガル?」とついつい聞いてしまうガル部長。アンリ・トマジとジャック・イベールだそうです。こちらもぜひ!
サックスの歴史から、グラズノフのサクソフォン協奏曲の聞き方まで...なんて盛りだくさんのインタビューでしょうか。このお話が頭の中に入っていたら、筒井さんのご公演を何倍も楽しめそうです。筒井さん、ありがとうございました!
あ、でも、部長も皆さんも、「パヴァロッティ!」は心の中だけで唱えてくださいね!